雨音

きっかけ

私の頬に撃ち込まれた五つの痕は、日ごとに濃さを増していった。

一度降り注いだ火種の雨は、毎日のように私に激しい豪雨を叩きつけた。

今ではもう、つーくんと呼べないほど、私の薄っぺらな神経は麻痺し、傘を持たないずぶ濡れの状態で、筑士の豪雨と化した雨音の声と荒事を受けることしかできなくなった。

連日続く筑士の雨は、命を脅かすほど切迫していき、私の中のもう一つの命は、彼の大きな足元からの打撃により打ちのめされた。

痛みでうずくまった私に、筑士は容赦なく痕を埋め込んでいく。

――もう、耐えられない

私は、とっさに手元に置いてあったバックで防御しながら彼を力ずくで押し倒し、玄関の外へと飛び出した。

夜遅くに見た世界は、このマンションの軒下に灯った明かりのみだった。そこに照らされた闇の奥は、滝のように降り注ぐ雨音だけが、筑士の荒事により聞こえづらくなってしまった私の耳に、小さく入り込んでいた。

エレベーターのない場所へと逃げ込んだ私は、そこにあった階段を命綱のように辿り上へと駆け上がった。