衝撃

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衝撃

筑士はすぐに私のうしろまで迫ってきていた。 恐怖で動かなくなった重たい足を最後まで行き着くには、まだ先に距離が残されていた。 腕をつかまれ、身動きを封鎖されたまま、頸動脈を強く押さえられた。 欄干に背中を反らせもがき苦しむ私を、筑士は頬をあげて視線を突き刺す。雨音は私の悲鳴染みた声を打ち消し、彼の不気味な笑い声をも飲み込んだ。 私の爪は筑士の腕の肉を容赦なくもぎ取った。私ともう一つの命の代償は、その程度のものでいいのだろうか。 遠のく意識の中、力一杯身体を捻り、筑士を押し返した。何度も何度も、腕を交互に伸ばして彼の首を強引に押し込めた時、私の目の前から消えた。 暗く激しい雨は、一瞬の時間を止めて私にアロマを一滴落としたような快楽をもたらした。 「助かった……」 悪夢の解放とは、瞬時の逸楽と無限の地獄を連れてくる。 再び頸動脈が躊躇なく絞められた。見ると、私の首にかけられたバックの紐が、筑士を支えていた。 重力に逆らうことなく、私はその筑士の待つ闇の底へと引っ張られていった。
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