墓場まで持って行く話

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「へー、それでお前もここにいるってか?」 大作はたいそう可笑しそうに笑った。 「風の便りで聞くと、愛菜は獄中出産をしたらしい」 「ご両親は?」 「何となく気づいてたみたいでさ。家族がぐちゃぐちゃになっちゃったってショックを受けてるよ」 「まぁ、そうだよな」 二人は苦笑いを浮かべた。 「でもさ、やっぱり女は強いよな。いざとなればなんでもできちゃうんだから」 「そうだな」 妙な沈黙が流れた。 「でも、よくここまで我慢してきたよな、お互い」 「だな」 「もういいんじゃない」 彬は天を仰ぎながら「そうだな」と返した。 「だってもううちら墓場なんだし」 二人の笑い声は不気味な音となって夜空に溶けていった。
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