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第二話 I'm at his back
ハイテンションな日々を送ってきた。
幼少時代から。
それは私がそうしたくてやってきたというよりかは、何かに突き動かされてと言う方がしっくりくる。
両親もそうだったが、弟がうちに来ることは大歓迎だった。
「遠慮はいらないからね」
弟の隣で膝をついた父は、彼を気遣うように肩を抱いて覗き込み、私のことを紹介した。
覇気がないというか、ぼんやりとした表情の弟は、ただ頷いただけだった。
友達の兄弟をずっと羨ましいと思っていた私は、すごく嬉しくて、この子のためならなんでもできると思った。
子どもらしくきゃっきゃと笑うことのない弟がいつか声を上げて笑う日がくればいいなと期待した。
「絢斗くんてどこかからもらわれてきたんでしょ?」
特にいじめっこでもない近所の友達が、子供特有の好奇心で悪気がなく弟に質問してきたことがあった。
「うん」
こくりと頷く弟に、彼らは矢継ぎ早に訊いてくる。
「どうして?本当のお母さんは?いなくなっちゃったの?」
わからない、とぼそりと言う絢斗に駆け寄り、私は彼をかばった。
「そういうこと訊いたらダメなんだよ!」
触れられたくないことを質問されてもあまり気にしていない様子の弟が私は誇らしかったけど、彼にイヤな思いをさせるヤツは絶対に許さないと心に決めていた。
「自分たちだって訊かれたくないことあるでしょ?」
でもとか、だって、なんでとぶつぶつ言っていた彼らは、ぎろりと睨む私に逆らってはいけないと直感したようだった。
互いの顔をちらちら見ると、不服そうに私たちの前から去っていった。
「堂々としてればいいからね」
振り向いて絢斗にそう言うと、彼はうんと返事した後に「もう慣れたけど・・」と付け加えた。
慣れるほど言われているのかと私は泣きそうになった。
「大丈夫?」
弟が私の顔を覗き込みながら確認するので、「何が?」と言うと「お姉ちゃん元気がないから」と言われた。
「・・・お腹が空いて死にそうなだけだよ!」
半ばヤケクソに笑ってみせる私につられて絢斗も笑った。
どうかこのまま、弟のことを守れますように。
私はそう心の中で祈っていた。
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