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スクープ2 化学室の謎
まったく、言うだけ言って帰りやがった。
放課後、絵美姉ちゃんに頼まれた、化学室の排水管掃除、流れるようにしてって、自分はほかの仕事があるからって言って帰った。
まあこの学校は、部活は、強制ではないけど、何かに所属していなくちゃいけない。俺は姉ちゃんに強制的に、放送部へ入れられた、一年の活動は皆無だ、兄ちゃんにも笑われた、豪ちゃんもそれでいいと言っていたし。
兄ちゃんは前の学校で中途半端にやっていた陸上をここでやって、今じゃ高校に行っても続けている、両立は大変だけど、楽しんだってさ、俺は疲れるのはいいや。
「だからって、なんで、配管掃除なんだよ、まったく」
ガチャ、ガチャと、いろんなものを持って教室の鍵を開けた。
「どっこいショット、まずは換気、お湯も沸かさねえとな」
水をジャージャー出して回った。
「もとはどこだ?」
配管が一つになって流れるところ、まずはそこをやっつけないと。
「ここだな?」
ガタン
ン?今音がした?
カシャン、カシャン。
隣の準備室から?
そーっと開けてみた、白い年期の入ったカーテンが部屋を薄暗くしている。気味の悪い標本が並ぶ、生物もあるんだもんな。
「誰かいますか?」
しんとした、気のせいか。
足も入れずのぞいただけで出た。
部屋に戻って、仕事をして、請求書に書き込んで職員室にカギを返しに行った。
請求書って言ってもお金は微々たる金額しか発生しない。これはいつだれが何をしたって言うメモ書きみたいなもんだ、生徒が掃除しているからな、本来金なんか出るわけない。
ただ、プロの仕事はしている、本来なら、ちゃんとした清掃業者が来て数時間でも仕事をすりゃ一万円以上取られるんだ。
それを杉の会社は、たった五百円のワンコインだ。まあそれで助かるとこもありなわけだし。
「島先生、終わったー、ごみ、詰まってたぞ」
「サンキュー」
「それとさ、準備室で物音してさ、よく見てないから、気にしておいて」
「物音?なんだろう?」
「知らねえよ、泥棒でもはいって、俺のせいにされちゃあかなわないからさ、カギは閉めたからな、カギは返したぞ。それじゃあ、請求書、ジムに出しておくよ」
「ああ、ちょっと見てくるか」
でも、島先生は、十時まで、誰にも知られることなく、準備室に倒れていたことになるんだ。
夜、十時半。
「もしもし、はいそうですが、お、先生、お久、え、尚?ハー?今どこよ、うん、先生もいるんだね、いく、豪もつれてくから」
なんだ?
ばたばたと走る音は兄ちゃん、暑くなり始めたから、あちこちのふすまは空けてある、夏は、どこもかしこも開けっ放しになるけど。
「尚、島先生が入院した、倒れて他のだれも気が付かなかったんだと」
「まさか、化学準備室?」
そうだ、今から学校へ行けるか?
「いく!」
「あ、もしもし、ちょっと中学校まで来れる?島ッチが、倒れてたんだ、ちょっと訳アリ、来て!」
携帯で話しながらの兄ちゃん。
ばーちゃん。
兄貴はばあちゃんに訳を話しに行った。
「いけるか?」
「うん」
豪さんもあとで来る、携帯で話しながら俺たちは学校へ向かった。
「ゆー!」
「桑原!」
「どないしたん、島倒れたって」
「あのね」
俺は、桑原さんに、話をしていると、続々と兄貴の同級生が集まってきた。
どやどやと、職員室のドアを開けた。
「先生」「シマちゃんは」「どうなっとるん!」「病院どこ!」
「落ち着け!尚、お前、警察に話してくれないか、祐、お前もついていけ」
俺と兄貴は、校長室へといわれ、そっちへ。
「お前ら、外出ろ、豪、ちょっと」
校長室には、校長先生と、警察官と私服警察官。
兄貴は、校長先生にあいさつして、学生証を警察に出した。
座ってと言われ、俺がやったことと、岸先生がどうしてあそこにいたのか聞いてきたんだ。
「じゃあ、配水管の掃除をして、準備室で、変な音がしたから、見てくれと言って事務所に行って、帰ったんだね」
「はい、島先生以外ほかの先生方もいたんで」
「ああ、それは確認取ってるよ、ただね、時間があまりに長かったものだからね」
「島先生は生きてるの?」
「ハハハ、生きてるよ」
「よかったー」
「倒れていたって、何かあったんですか?」
「ああ、殴られて倒れていたんだ」
「殴られた?」
「棒のようなものでね、ただ凶器は特定できてないけど」
「あそこならいろいろありますよね」
「人体模型とかもあるし」
「まあそこは警察に任せましょう、もうよろしいですか?」
「ええ」
「すみません、もし、犯人が見つかれば、傷害罪、殺人なんかもついてきますか?」
「まあ、無きにしも非ずだな」
「まだ細かいことは言えないし」
「いいえ、ありがとうございます、弟が犯人にさせられたらたまらないので、それだけです」
兄ちゃんは、パシンと言ってくれたんだ。
僕たちは犯罪者の親がいる、それだけで普通なら冷たくみられるけど、母親の違う姉ちゃんのおかげで、俺たちはそんなことを言われないですんでいるんだ。兄ちゃんは感謝してるっていう。俺もよくわからないけど転校してもいじめられないで今までやってこれたんだ、ありがたいと思わなきゃな。
職員室を覗くと、先生とみんながいなくて、どこへ行ったか聞くと、化学室へ行ったようだという。
廊下に人だかりが見える。
「どうしたの?」
「豪が入るなって、現場荒らされたくないって」
「豪!」
「終わったか?」
うんと言う俺に、ごみ、これか?と聞いてきた。
「うん、これ」
ゴミ箱の中のものを見た。先生、これだってさ。
「尚、お前、音を聞いたって言ったな、どんな音だ?」
「んー、硬いものが転がるような音ガタンって」
「ガタン?落ちたんじゃなくてか?」
「何か、けったような、つまずいたような、あ、そのあと、ガラスのきれいな音が、カシャン、カシャンって」
「ガラス?」
「カシャン?」
でもその時、誰かいますかって入ったけど、音沙汰なし、鍵をかけて帰った。
この部屋は薬品とかもあるから、鍵はかけないといけない。
「あ、鍵開いてた、俺、あそこ、そのまま開けたもん」
「やっぱり、誰かいたんだな」
「なあ人体模型、あ、ここにある、じゃあなんで殴ったんだ?」
「今見てるんだけど、そんなのないんだ」
んーとごみとにらめっこしてる豪ちゃんと、圭太さん。
「なに?どうかした?」
「これさ…女子―、これってさ、パンスト?」
どれどれとのぞき込む女子たち。
「ほんとだ、でも先のほうだけ?」
「これが詰まってたんだろ?」
うん。
「広げてみるか?」
入り口に一番近い机の上に新聞紙を広げ、そのうえで、丸まったゴミを広げていく
先が結んであって、破けてる。
「昔、何かで読んだか見たかしたことがあんだよな、砂とか土とか入れて、人を殴った後、それを捨てるって」
「先生、それ!」
「あたり、みんな、排水溝見て」
広げたごみは、それを表していた、直接入れられなかったのか、ビニルの切れ端もある、これじゃあつまっても当然だ。
でも俺が見た時はそんなものなかった。
「後窓の外、何かない?」
「準備室の床なんか落ちてねえか?」
すごい、これが、仲間?
「あった、何か引っ張るものない?」
「これは?」
いけるかな?
「こっちもあるぞ」
出てきたのは、破けたストッキング、でも新しい、汚れは排水管のものだ。
準備室からは土が出てきた。先生すごい。
「尚、ちょっと来てみろ」
音が何なのか、ちょっと叩いてみろと言われた。
いろんなものをたたく
んー違うな。
ガツン!
ガタン!
ん?目の前にあったスチールの棚を手で押した。
ガタガタ。
「豪ちゃんこれだ、ここにいたんだ、だから奥まで見なかったから、ここに隠れてたんだ」
「そうか、じゃあ、この辺に音が鳴るものが・・・ここにあるか?」
周りは、スチールラックで、ガラス窓はあるが、音となると。
「ガラスはこれだけ」
こんこんと叩いている、
「何かが当たったのかな?」
「何か?」
「学生服、ボタンとか」
「ボタンねえ・・・」
「長嶋」
「なに?」
「お前のその髪結んでるのプラスチック?」
みつあみのおさげの先についたピンクの丸いもの。
「あ、うん」
「ちょっと、ここで窓にあたるように、してくんねえ、音が聞きたい」
「音?変な奴、どうすればいいかな、振り返るか?」
コツン、カシャ「あ、こっちだ」
髪の毛を手で持ってカシャカシャ。これ、これ!
「スチールか、じゃあ、長い髪の毛の人が…先生」
「なんだ?」
「犯人わかったかも?」
「まじかよ」
ウソ―、この短時間でわかっちゃったの?
準備室を出て、みんなを教室へ
「種明かし、島は、結婚する」
「やっとかよー」
「まったく、今までよく我慢したよな」
どういうこと?
「保険医の宇崎」
うさ先生?
「じゃあ、嫉妬?」
「だな」
「決定」
「生徒?」
「んーだといいけど、先生」
「ハー、お前ら」
そういって、兄貴たちの頭を撫で始めた。
「オフレコで頼むわ、確実な証拠はない、まあ、尚の耳がそれを証明するだけだが、穏便に済ませるよ、彼女のためだ」
「解決」「終わったー」「先生、病院ー」「あ、そうだ、警察、どうする?」
「そうだなー」
「晃兄ちゃんに聞く?」
「なんでだよ」
「警察」
「管轄外だろう?」
「でも聞くだけなら」
「尚、ここからは俺たち教師に任せてくれないか、もしかしたら同僚なのかもしれないから」
「先生…うん、それじゃあ帰ろう」
遅くなったな、ちゃんと勉強しろよ。
大きく手を振る先生。
先輩たちと帰ってきた。
「よかったやないか、殺人なんかにならへんで」
「まあな、でもよー」
「そうよ、女の嫉妬は怖いんですからね」
「まあいいや、それよりお祝い何にする?」
もうそんな話で盛り上がってたんだ。
「尚―!」
「おー、隆」
「今電話もらった」
「いいのかよ、こんな遅く出てきて」
「店閉めるし、それで、島ちゃんどうなったの?」
「ケガだけだって、入院してるけどすぐよくなるよ」
「よかったー」
「なんだよ、隆、お前、男のくせに、島ちゃんのファンか?」
「まさかー、俺たちは、ウサギのファン、やっと結婚するのに、泣かせたらグーパンチだぜ」
「なに、知ってんのかよ」
「知ってるよ、男物シャツクリーニングに持ってきてるんだ、俺が一番に知ってラー」
「負けた」
「そうか、ウサギ頼んだぞ」
「いわれなくてもそうする」
ははは、帰るぞー!
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