封印

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封印

地下の洞窟のような場所。長く白い髭を生やした男性を中心に人々が集まっていた。彼らの目の前には地下に向かう階段が見える。 「封印するのだ」 「ケジジさま、まだ姉さんが戻って来ていません…」 「構わん。まさか禁断の転移魔法を成功されるとはな。恐ろしい才能だ。あいつは世界の脅威としかならん」 「そんな…脅威だなんて!」 「お前の気持ちは分かる。だがな、あいつは自分自身の生命力をゲートの維持のために注いでいるはずだ。もはや長くはないはず」 「生命力? どういうことですか?」 「どんな魔法にも対価は必要だ。通常は魔力だけで十分だが、時空を越えるとならば、魔力だけでは足らん。しかし、魔力を補うためとは言え、他人を傷つけることはしないだろう。そうなると、自分の命を使うしかあるまい」 「そんな…」 「仮に向こうの世界の者たちが、我々の世界に来たらお前はどうする?」 「どうするって…」 「邪悪な心の者が来たら、この世界に大きな影響を及ぼす。高度な能力のある者たちが侵略してくる可能性もあるのだ。いかなる世界も強者は弱者を支配したがるもの。それはこの世界でも証明済みのこと。我々はこの世界の秩序維持のために存在している。さあ、封印を始めろ!」 周りの大賢者たちが呪文を唱える。そして、巨大な椅子のような石像がズゴゴゴォーと生成され、階段はその下に埋まった。 「過度な文明の力は、我ら自身を滅ぼす。我々の身の丈にあった成長が望ましいのだ」 「姉さん、ゴスス姉さーん!」 「ネムムよ、姉のことは早く忘れるのだ」 「姉さん、必ず助けるからー!」 「地上には神殿を建てよ。祈りを捧げ、今後この場所を守り続けるのだ」
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