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“ヒト”というものは面白い。
この世の全てに名前をつけようとする。名前がないものには「可哀想」と言うし、誰が名付けるか、争いもする。
そんな“ヒト”が存在しているのが、【地球】である。もちろん、地球という名も“ヒト”がつけた。
【地球】は、青を基調にした楕円型の惑星である。薄橙色をしたものが“大地”であり、緑の“植物”がそれを覆っている。
“ヒト”は自分たちが存在しているこの惑星のことを口を揃えて美しいと言うが、私もそう思う。
この掌の中にある惑星の中で一番のお気に入りなのだ。
“ヒト”は地球の外へ出て、地球以外の惑星を発見し、それぞれ名をつけた。
【火星】、【水星】、【木星】、【金星】、【土星】、【月】──
どれも美しい響きのある名だ。
“ヒト”は常にどれかしらの惑星について対話を重ねている。新しい星が見つかったときも、大層喜んでいた。もちろん、その時も名をつけていた。
私は、“名前”に惹かれているようだ。
“ヒト”が私を見つけたら、何と名をつけるだろう。惑星を観察するほか、することといったら“ヒト”が私につけそうな名前を考えることだけだ。
ところが、不思議と思いつかない。どれだけあたまを捻っても、一文字でさえ浮かんでこなかった。
早く私を見つけて、名をつけてくれ。
“宇宙ステーション”の窓から私を指さしているところを何度見かけたことか。
何度、私について話し合っていると思ったことか。
“ヒト”には私を見つけることは難しいようだ。
今日も、窓の向こうでぷかぷかと浮かんでいる“ヒト”たちが、私を指差して対話をしている。
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