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彼が私の頬に触れた。
大きな手のひら。
感じる体温。
これがあの『五分間』……
確かに彼が戻ってきてくれた。
神様からのプレゼント。
溢れる涙を彼の温かな指が拭う。
けれど、それは今この瞬間だけだ。
この温もりと優しい笑顔を、記憶の中に閉じ込めて、私は前を向いて生きて行こう。
それが、彼の望みならば……。
「さよなら……」
「……さよなら」
眠っていたダイアナが、顔を上げて「にゃあ〜ん」と鳴くと、彼の膝から飛び降りた。
次の瞬間、彼の温もりと姿が消え、ジャングルジムの上で小さく光った星は、紺瑠璃の空に弧を描くように線を引き、空高く昇っていった。
――Fin――
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