ブルーモーメントの奇跡

温かな五分間

　夜道を暫く歩いて、後ろを振り返る。

　ライトアップされたアトラクションが、煌びやかに夜を彩っていた。
　さっきまでの出来事が、まるで夢を見ていたみたいだ。

　その中でも一際華やかな光を連れて、ゆっくり回る観覧車。
　折角 遊園地に来たのだから、観覧車だけでも乗ってみようかとも考えた。
　それに乗って一番高い場所まで行けば、少しでも彼の近くに行けるのだろうか……と。

　そんな事をぼんやりした頭で考えてはみたものの、泣き腫らしたこんな顔で、一人きりで観覧車に乗るのは流石に気が引けて、私は賑わいに背を向けて一人で外へ出た。

　駿さんが言っていた『五分間』……
　それがどんな事なのか、結局何も分からず、電車に揺られながら窓から外を眺める。

　いつも見る景色とは違っていても、目の前に広がっているのは、いつもと変わり映えのしない夜だ。

　車内に目を向けると、吊り革に掴まり談笑する、元気そうな学生のグループ。
　一日の仕事を終え、疲れ切って、シートに身を投げ出すように眠っているサラリーマン。
　反対側のドア付近には、デート帰りのような甘い雰囲気のカップル。

　きっとこれも、いつもの何という事のない光景なのだろう。

　電車を乗り継ぎ、駅から家までの道を一人で歩く。
星空に、彼の姿を探しながら。