温かな五分間

2/4
23人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
 彼と何度か過ごしたあの公園の近くに差し掛かると、ジャングルジムの天辺(てっぺん)に人影がぼんやり見えた。  ハッとして思わず駆け寄ると、そこには彼が座っていて、さっき私を見つけた時のような柔らかな微笑みを見せた。  胸が詰まり何も言葉は見つからず、心臓の鼓動を何とか飲み込みながら、冷たい鉄棒を握り締め、一段、もう一段と、彼と星に近付いていく。  彼の膝の上で、小さな猫が眠っていた。 「ねぇ、こいつってルナとアルテミスの子ども?」  彼は、まるで一連の出来事が何もなかったかのように、 あの頃にそのまま戻ったかのように、 人懐っこい笑顔で、隣に座った私に聞いた。 「……ええ。確証はないけど、絶対そうじゃないかと」 私も高ぶる気持ちを必死に抑え、ごく普通を装い、そう答えた。  私の飼い猫『ルナ』と、彼が面倒を見ていた野良猫『アルテミス』  この二匹の猫が、私達を繋いでくれた。  白黒のまだら模様のルナ。  額にミルクティー色の三日月に似た模様がある、白猫のアルテミス。  小さな猫は、額の三日月模様と、脇腹とお尻に黒い模様のある白猫。  間違いないと思った。 「そっかぁ……。えぇっと……それなら名前は……」  彼は嬉しそうに猫の体を撫でながら少し考えて、思い出した! とばかりに私の顔を見る。 「「ダイアナ!!」」  顔を見合わせ同時にそう言うと、私達は、知り合ったあの時と同じように、声を上げて笑った。 ☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜☆〜 【ルナ・アルテミス・ダイアナについて】 『美少女戦士セーラームーン』  作中に登場する猫の名前。 『ルナ』はメスの黒猫。 『アルテミス』はオスの白猫。 『ダイアナ』はルナとアルテミスの子ども。  共に額に三日月の模様がある。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!