温かな五分間

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 二人の笑い声が夜空に吸い込まれて行くと、彼は空を仰いだ。  私は、彼の横顔をただ見つめる。少しでも視線を外せば、彼がまた消えてしまいそうな気がして……。  思わず彼の肩に手を伸ばしてしまいそうになり、私はハッとして慌てて手を引っ込める。  ここに居る彼は、幻……  手を伸ばしても触れられないこと、 抱き締めたくても、実体もなく体温を感じられないことに……  きっと私は、絶望する……。  空を仰いでいた彼がゆっくり私に目を向け、切なげな笑みを浮かべた。 「また君の前に姿を現す事が、余計に悲しませてしまうのは分かってたけど…… ごめんね。 どうしても伝えておきたくて……。 俺のことは、どうか早く想い出にして欲しい。 悲しみの中に、いつまでも居ないで。 君には “ () ” ではなく “ (未来) ” を 向いて生きて行って欲しいんだ。  だから……言えなかった 『さよなら 』 を言いに来た」
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