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二人の笑い声が夜空に吸い込まれて行くと、彼は空を仰いだ。
私は、彼の横顔をただ見つめる。少しでも視線を外せば、彼がまた消えてしまいそうな気がして……。
思わず彼の肩に手を伸ばしてしまいそうになり、私はハッとして慌てて手を引っ込める。
ここに居る彼は、幻……
手を伸ばしても触れられないこと、
抱き締めたくても、実体もなく体温を感じられないことに……
きっと私は、絶望する……。
空を仰いでいた彼がゆっくり私に目を向け、切なげな笑みを浮かべた。
「また君の前に姿を現す事が、余計に悲しませてしまうのは分かってたけど……
ごめんね。
どうしても伝えておきたくて……。
俺のことは、どうか早く想い出にして欲しい。
悲しみの中に、いつまでも居ないで。
君には “ 上 ” ではなく “ 前 ” を 向いて生きて行って欲しいんだ。
だから……言えなかった 『さよなら 』 を言いに来た」
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