28人が本棚に入れています
本棚に追加
音響担当
さやかのゴリ押しで、私は演劇部の夏の大会用の戯曲で音響係に加わることになった。
「よ、宜しくお願いします」
放課後の体育館の舞台上、高1、2年の部員23名の視線が一斉に私へ向かう。さすが演劇部、アイドル並みに可愛い女の子もいる。アウェーにも程がある、高2の6月に急遽入ってくる新参者を受け入れてくれる気がしない。
「ミントの親友の知里さんだね、宜しく。僕は部長の柊です、同じ高2だからタメ口でいいよ」
部員の中で人より頭2つ分背の高い男子が、やんわり細面を緩ませて私を見た。さやかは部内の愛称〈ミント〉と呼ばれている。
「いつもミントが自慢しているよ、音を聴き分ける天才だって」
「そ、そんな」
「そうだよー、知里はすごいんだから! なんたって絶対音感あるんだもん」
こちらの否定を秒速で打ち消された。すると、
「絶対音感ってすごいね! いつから聴こえるの?」
「生活音がドレミで聴こえるって本当?」
俄に、他部員が興味深そうに質問してくる。慌てて一つずつ応えると、わぁあ、と皆が歓声を上げる。リアクションの大きさに驚いて閉口していると、
公家顔の柊部長と満足げなさやかが並んで、それぞれ外側の腕を広げて私に差し出し、決めポーズした。
「ウェルカム演劇部」
最初のコメントを投稿しよう!