友達じゃいられない

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「ん……はっ」  唇が離れた瞬間に、がばっと空気を吸い込んだ。 「やば、その顔エロすぎ」  想太が笑った。痛々しい笑顔じゃなくて、俺に告白してくる前と同じ、自然な笑顔だった。俺は肩で息をしながら問いかける。 「そうた、おれ、今、どんな顔してんの?」 「オレのこと大好きって顔」  ふふ。想太が微笑む。 「冗談、やめ――」  言葉の途中で、口を唇でふさがれた。 「ごめん、やめたくない」  想太とずっと目が合っている。ああ、女の子と想太の目が合わなかったのはこのせいか、と思う。想太はいつも、俺だけを見てくれていたのだ。 「お前がオレのこと、恋愛対象として見ていないのは分かってる。でも今は、この雨がやむまでは、この時間に浸らせてほしい」  俺はこくんと頷いた。  ――雨がやんでからも、ずっと、想太に求められたら幸せだろうな。  頭がじんじんする。  雨が強くなる。傘に当たる雨の音が激しくなった。耳の中が雨音でいっぱいになる。そんな中、想太の声だけがクリアに聞こえた。 「翔吾、好きだ」  力強く抱きしめられる。雨音に包まれる傘の中で、俺の体には想太の愛が注がれていた。
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