友達じゃいられない

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「こんばんはー」  翌日の夜、大きなビニール袋二つを抱えた想太がやってきた。  想太が買ってきてくれたのは、缶ビールと缶チューハイ三本ずつ、紙パックの梅酒、日本酒の二合瓶。それに加えてさきいか、ポテトチップスなどの乾き物だった。 「すごい量」  俺が呟くと、想太が笑った。 「翔吾が何が好きか分かんないから、いろいろ買ってきちゃった」  部屋の中心にあるテーブルのそばにあぐらをかきながら、缶ビールを一本差し出してくる。受け取って、プルタブを開ければ、プシュッと空気が抜ける音がした。 「いつもは発泡酒なんだけど、今日は翔吾の誕生日だから特別。乾杯」  缶どうしをごちんと合わせてから口に運ぶ。缶を傾けて入ってきた液体は苦くてしゅわしゅわして、全然おいしくはなかった。 「あは、翔吾すごい顔」  想太が俺を指差して目を細めた。唇は弧を描いている。 「想太って、俺と一緒にいる時はよく笑うよな?」 「どうしたの、急に」 「昨日、学食にいた女子たちが、想太の笑顔を見た瞬間、びっくりしてたからさ」 「んー。翔吾と一緒にいると楽しいからかな」 「そうなんだ」  想太がにこりと笑う。なぜか、俺の心臓がどきりと鳴った。
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