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「な、なんだこれ……!?」
それは、明らかに首を吊るための縄です……いったいいつからそこに垂れ下がっていたのか? 驚く僕でしたが足下に転がる踏み台と
腰にしがみついて泣いているカノジョ……この状況から考えると、どうやら僕は踏み台に登った後、その縄の輪へ頭を通そうとしていたところをカノジョに止められたみたいです。
もちろん、そんなバカな真似をする気はさらさらなかった…というか、そんなことをしようとした記憶すらありません。
踏み台へ登ったところまでは覚えているんですが……。
「踏み台……」
そこで、僕の脳裏にある連想がふと浮かびました。
今、自分が倒れた音と、先程、縁側で聞いたあの音はなんだか似てるんじゃないか……それに、ここに転がっていた踏み台……あの音は、ここで誰かが首を吊って、その拍子に踏み台が倒れた音だったのでは……。
「突然、独りで中へ入ってっちゃうし……ほんとなんなのいったい!?」
恐ろしい連想に僕が怖気を覚えていると、相変わらずの今にも泣きじゃくりそうな声でカノジョがそう責めたてます。
「えっ!? 僕は君を追って中へ……」
事実の齟齬に僕は反論しようとしたのですが、その途中、あの玉暖簾の隙間から一瞬見えた、カノジョとは違う女性の姿が頭を過りました。
僕は、あの女性に招き寄せられたのか……そして、ここで首を吊るように仕向けられて……。
垂れ下がる首吊りの縄を見上げながら、そんな考えに思い至ると、急にこれまでにないほどの激しい恐怖心が込み上げてきました。
「こ、ここなんかヤバイよ! は、は、早く逃げよう!」
しどろもどろになりながらも僕はカノジョを起き上がらせると、慌てて縁側の方へと走って戻り、そのまま雨も気にせずに自転車でそこから逃げ出しました。
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