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さあさあさあ、しとしとしと……。
物静かで清廉な空気に響く雨音。
さあさあと白い線を描きながら空より降り注ぐ雨に視線を向ける。
雨脚は強く、屋根の上に降り注いだ傍から留まる所を知らない水の流れを作り続け、屋根の縁へ向けて止めどなく流れていく。
縁にたどり着いた水はそのまま地上へ向けてボタボタと大粒の水滴へと形を変えて落ちていく。
……ぱたたた、ぱらぱらぱら、ぴちょん。
それは誰かが流す涙を思い起こさせた。
―――誰かが泣いているとき、それを隠すためにお天道様は雨を降らせてくれるんですって。
「僕」の胸の奥がズキリと軋んだような気がした。
ふい、と顔を窓から背けるとそのままテレビのリモコンに手を伸ばした。
適当にリモコンをいじり、目に飛び込んできたチャンネルは「誰かが爆笑している場面だった」。
明るい雰囲気をテレビ画面から漂わせてくるバラエティー番組にそのまま没入する。
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