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現代日本のどこか、一組の恋人たちがいた。
恋人たちは学生の身分で大してお金を持ち合わせておらず、お互い楽しい思い出を必要最小限の金額で作るべく、雨中デートを常に楽しんでいた。
雨中ならば大抵の人間は濡れるのを嫌って外には出てこないし、晴天の時では楽しむことが出来ない事……主に、雨の奏でる音や雨が齎す光景の変化を楽しむことが出来る。
そして、雨にちなんだ『言葉』を恋人の片割れであるヒロインはとても好んでいた。
「誰かが泣いているとき、それを隠すためにお天道様は雨を降らせてくれるんですって。」
恋人たちは学校を卒業した後、それぞれの道を『自分一人で』歩かなくてはいけない運命が待ち受けていた。
理由は明かされることは無かったが、貧しい故にお互いが一緒に生涯にわたって共に歩くことは出来ず、猶予を与えられた時間内で精一杯の『楽しい思い出を作る』べく、雨中デートを楽しむ二人。
物語はデートが終わり、雨が止んた空を見上げたヒロインが台詞をこぼす所で終わる。
「誰かが悲しみを乗り越えたから、雨を止ませてくれたのかな。……今日を忘れないでね。」
「僕」は無言で本を静かに閉じた。
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