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1匹だけ居ないなんて、何処へ行ってしまったのでしょう。
千夜くんは特に気にした様子も無く、いつものようにタバコを吸っています。
僕は他の犬達にエサをあげながら言いました。
「千夜くん。茶色と白の毛色の子犬が居ません」
「あの鈴木に1番懐いている奴か?そういや珍しく姿が見えねーな」
「ま、まさか事故に…」
誰かに見つかったら、他の子犬達も居ない筈です。
僕の中で不安が大きく膨らみます。
千夜くんは、指でタバコを挟んだまま僕に言いました。
「鈴木、余り悪い方に考えるな。散歩に行ってるだけかもしれねーだろ。もう少し待ってみたらどうだ?」
「そうですよね…何事もないといいのですが…」
「あの山村だって風邪をひくんだ。予想外の事は幾らでも有るさ」
そう言うと、千夜くんは再びタバコを吸います。
他の犬達が僕のあげたドッグフードを食べるのを見つめながら僕は子犬の無事を祈っていました。
予想外の事…誰かに連れて行かれて大切に守られている可能性も0ではありません。
ですが、僕の脳裏には、あの子犬の姿が消えませんでした。
僕の我儘で、もう1度、会いたいと思ってしまいます。
いつまでもここに居ても、子犬にとっては幸せではないかもしれませんのに…。
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