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デートと言う名の勉強
レイさんはそう言うと中に入って行きます。
僕もカバンを持って急いで後に続きました。
図書館デートとは、一体どうすれば良いのか…。
ですが、話さなくても不自然じゃない環境は、ある意味、気が楽です。
僕は時々この図書館には来たことがあるので見取り図は頭の中に入っていました。
「レイさん、こっちです」
僕は、あらぬ方向へ行こうとしていたレイさんの手を取ります。
思った以上に小さくて柔らかい感触に僕はさっきからドキドキしてばかりいました。
「鈴木さんの手、暖かいですね…」
レイさんが小声で言った言葉に僕は上手い返事が出来ません。
こんな時、千夜くんならどう返すのか…。
考えても応えは出ません。
部屋に入ると、何人かの学生が黙々と勉強に集中していました。
僕はソファー席になっている椅子にレイさんと並んで座ります。
館内に入る前に言っていたように、レイさんは物珍しそうに本棚を見渡しますが、決して話し掛けたりしてきません。
僕はそっと手を離します。
すると、レイさんは直ぐ傍の本棚まで行って本を眺め始めました。
レイさんも読書が好きなんでしょうか?
僕はカバンから教科書とノート、それから筆記用具を取り出しました。
先ずは得意な現国から勉強し始めます。
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