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雨の日の別れ
やはりレイさんを警戒させてしまったと思った僕は妥協案を出してみました。
「お宅を知られるのに抵抗が有るようでしたら、傘を売っている近くのコンビニまででも…」
「鈴木さん、ありがとうございます。でも、もういかなきゃ…」
いかなきゃ…?
帰る、の間違いではないでしょうか?
僕がそう思った時、レイさんはワンピースのポケットから何かを取り出しました。
それを僕の方に差し出します。
「鈴木さん、来月誕生日でしょう?これ、プレゼントです」
誕生日まで知っているなんて僕は流石に驚きました。
「レイさん…貴女は、一体…」
茫然とする僕にレイさんは儚い笑みを浮かべます。
「受け取って…下さい…」
そう言ってレイさんは手を差し出したままです。
僕は、余り詮索してはいけない気がして、受け取ろうと手を差し出しました。
と、レイさんに手を握られ、誕生日プレゼントだと思われる物が僕の手の中に移されます。
「レイさん…?」
初めて手を取った時、ドキドキしていた僕は今は何故か切なくなってきました。
この手を離してはいけない気がして…でも、レイさんはプレゼントを渡すと手を離してしまいます。
「鈴木さん、さよなら…」
レイさんは今にも泣きそうな笑顔を浮かべて言いました。
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