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そして立ち上がると、そのまま僕の方を振り返る事なく、走り去っていきます。
「レイさん、館内は走るの厳禁です!」
僕は急いで勉強道具を片付けると、直ぐにレイさんの後を追いました。
閉館が迫っている事を考えると、レイさんは恐らく外に向かって行ったに違い有りません。
雨の中を1人で…。
外に出て、辺りを見回しましたが、レイさんの姿はどこにも見えませんでした。
僕は走った訳では有りません。
ですが、レイさんが走り去ってから、僕が勉強道具を片付けるのに1分も掛かっていません。
それから直ぐに追い掛けたのに…女の子の足で、そんなに遠くに行けるものなのでしょうか?
雨が強くなってきたので、僕は折り畳み傘を広げます。
その時、レイさんがくれたプレゼントから彼女の声が聞こえてきました。
『ありがとう、鈴木さん。大好き。私、幸せだったから…』
「えっ?!」
僕は、その時初めてレイさんのプレゼントをまじまじと見ました。
レイさんのくれた物…それはカバン等に着けるチャームのようでした。
そのチャームは茶色と白の毛色の子犬を型どったものである事が僕を更に驚かせました。
まるで…あの居なくなった子犬が人間になって、僕に最後に会いに来たみたいではありませんか。
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