【終電】

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【終電】

【終電】 「ヤバイ、間に合わない…」 『最終電車の扉が閉まります!』 「カッン….カッン…カッン…カッン…」 俺はもーダッシュで… 閉まりそうな電車の扉に片足を投げ入れた… 「痛っ….」 俺が声を上げた瞬間… 電車の扉は左右に面白い動きをし… 再び扉は全開となった… そして、何とか終電に乗る事が出来た。 この時、俺はまだこれから本当の恐怖を味わうことを… 知る由もなかった。 『沼留…』 『本日の最終でございます』 『お忘れ物が無いよう下車願います』 車掌のアナウンスにより起きる事が出来た。 仕事の疲れから寝ていたようだ… 俺がこの駅…「沼留」で助かることは… ここが終点であることで寝過ごす事が無いからだ。 「ふぁ〜…」 「たがかか20分なのに…」 「よく寝た…」 俺は抱えていた鞄を手に持ち立ち上がった。 俺の名は「友利 まさし」… 歳は37である。 俺は化粧品会社クリーンフェイスのサラリーマンであり…商品開発を業務としている。 現在、男女問わないスキンケアの商品開発を行っているが… 担当常務からこのコロナ禍による要素を含めたスキンケアであるのか? それは、このスキンケアによって殺菌及び保護が可能なのかとの問いに… 俺は答える事が出来ず… 商品化は難航していた。 そんな事から終電が日課となり… 「珍しいなぁ…」 「俺一人か?」 いつもは何人かの乗客がいるのだが? 薄暗い裸電球の明かりがプラットホームを照らし俺は改札口に向かった… 俺はこの時「ハッ」とした… 「この時代に裸電球?」 「確か昨日は?」 俺は今迄、プラットホームの照明を気にした事は無かったが… 何か言いようのない不信な情景であると… 「何か違う…?」 改札口に向かうにつれて不信な情景は俺の心を怯えてさせていた… 俺は自分を落ち着かせるため… 深呼吸して… 「まず、改札を出ること…」 そんな独り言を話し自動改札機に定期をタッチすると… 「ピッ…」 いつもの様に反応はあったが… 中央が空いている左右の扉は動くことは無く… 数秒遅れて… 自動改札機の残高などが表示されるモニターに… 「ヨウコソ…」と切れかかった文字が映し出され… 扉が開いた… その文字「ヨウコソ」が俺の脳裏に焼き付き… 背筋に悪寒が走った。 俺は今迄と違うと感じていたが… どうする事も出来なかった。 後ろを振り返り駅名を確認すると… 「沼留」とあり間違いないと… 俺は家に帰るため改札を出て短い階段を降りた。 「あれ?」 確か商店街のアーケードがあり、その手前に路地が…? 「おかしいなぁ?」 今朝はその路地を通り、駅に着いたのだが… 路地は蛍光灯に照らされ薄暗い情景ではあるが商店街のぼり旗が無く… まったく違う情景であった。 今の情景は商店街の存在は無く… 住宅が土地いっぱいにひしめき合うように建てられていた。 その住宅手前にわずかな道があり… 「同じとしたらあの道を右だと…」 俺は誰に話すこと無く独り言を呟きわずかな道を右に進んだ。
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