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二年前
最近、なんとなく姉の体がヌーディーになってきた気がする。腰の括れとか、髪をかきあげたときのうなじとか、どことなく、そういうものが漂っているのだ。
「なによ、あんた。わたしになにかついてる? そんなにじろじろ見て」
「別に」
姉は、自分がヌーディーになってきたことに、自覚はなさそう。……いや、あるのか? ないのか? あったりする? わからない。
「お姉ちゃん。今度、服貸して」
「いいけど、たぶん、あんたじゃ、似合わないんじゃ……?」
いやいや。わたしだってね、身長、体重は姉とほとんど変わらないわけよ。似合わないわけ、ないでしょ。
着てみた。似合わなかった。鏡の中に映っているわたしは、縦横の数字上は姉と同等なのに、凹凸というものがないと、こんなにもおかしなことになるのか、というほど、すてん、としたシルエットになっていた。
「うん、似合ってるよ。うん、全然いい」
「お姉ちゃん、心にもないこと言わないで」
姉と鏡越しに目が合った。
「大丈夫だよ、わたしに似て、あんたもそのうち、こういうの絶対似合うようになるから」
「つまり、やっぱり今は、ずんどうって言いたいんじゃん」
姉は、くすりと笑った。
「まあ、いいじゃない。そんなに焦らなくても。ゆっくり、大人になればいいんだよ」
姉はぽんぽんと、わたしの頭をやさしくたたいた。
リビングの棚の上に、二年前家族みんなで旅行したときの写真が飾ってある。そのときの姉は、今のわたしそっくりで、短い髪に、小麦色の肌、男子と見間違うほどの高身長に、スリムな体形だった。それがまさか、こんな成長を遂げるなんて。
妬ましいような、ちょっと将来の自分を期待するような、何とも言えない複雑な気持ちで、写真立ての中の姉と、目の前でテレビを見ながら馬鹿笑いしている姉を、見比べていた。
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