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九
アール君を抱えて家に飛んで帰ってパパとママに、原っぱでの出来事を話した。ママは私とアール君をみて困った顔をすると。
「エルバ……あなた、この子と血の契約をしたようね……これは、そうとう旧式の術式契約だから……いま、この国で解ける者はいないわ」
「えっ?」
――旧式の術式?
「これはこれは、みただけで旧式とわかるとは……さすがです。僕が使用する魔法は、どれも旧式なのでカンタンに解除できません。エルバ様、あきらめてください」
そんな、誰も解除できない旧式の術式で、血の契約だなんて……
「アール君はいいの? 私のことなにも知らないのに……」
「いいですよ。それに僕が側にいるとエルバ様はなにかといいと思いますよ。この前のように"麻痺草"を食べてしまったときとかね」
この前の麻痺草?
「え、あのピリトリ草をくれたのはアール君だったの?」
「はい、あの日。原っぱを散歩をしていたら倒れている子を見つけて、確認しましたら痺れ草を食べたようなので、急いで採ってきました。あのピリトリ草は魔族の森のなかに生えている草で、この国の人達では採りに行けません』
「ま、魔族の森?」
国の東側――魔族が住むといわれる森。その奥には魔王が収める魔族たちの国があるといわれている。あのピリトリ草はエルバの畑にタネを植えたから、魔族の森まで採りにいかなくてもいいのだけど。
魔族の森には、この国に生息しない植物が生えているのか――すごく気になる。
「ねえ、アール君。その魔族の森にはどんな草が生えているの?」
「魔族の森にですか? えーっと、猛毒の草、人食い草、あとは…………」
二人で話しているとママがアール君をヒョイッと持ち上げた。
「はいはい、アール君その話はストップ。それ以上、エルバに話さなくていいわ……ところでエルバ、あなたエルブの原っぱで麻痺草を食べたの?」
「あっ!」
しまった、内緒にしていたのに……パパとママの前だった……ママなんて、アール君を抱っこしながら鬼の形相だ。
「えっ、……た、食べてないよ」
まったくの嘘である。
ママは頭を抱えて。
「また、食べたのね。このまえは毒草を食べて紫になったり、変な斑点つけて帰ったときママ、エルバに言いましたよね。"危ない薬草は食べないでね"と……また、知らずに食べたの? それも知っていて食べたのかしら?」
「うっ……」
私には博士がいるから……大丈夫だなんて言えない。
「ごめんなさい」
「いくら、毒と痺れが聞きにくい体質かもしれませんが、その体質に慢心してはダメです。しばらくエルブの原っぱに行くのは禁止です!」
ええ!
「ママ、もう食べないから許して、ごめんなさい」
「こんどばかりは許しません。アール君、あなたは薬草について詳しそうだから。使い魔として、この子の監視もよろしくお願いしますね」
「かしこまりました、ママ様」
「ママ!」
「しっかり、エルバを見張るんだぞ、アール」
「はい、パパ様」
そう。この日。使い魔アール君は私の監視役になったのだ。
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