百三十二話

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百三十二話

「ヤツはショボイが黒魔術を使うから……人里は大事になっているかと思えば……何だ、これは?」   「よく分かりませんね……これが聖女?」  聖女とは――神聖な女性。 多く宗教的な事柄に生涯をささげた女性をさすと、昔調べたスマホに書いてあった。私が知っている物語の聖女だと瘴気を払ったり、結界を張ったり、ヒール(回復魔法)を使いどんな大怪我をも治していた。  アマリアさんは黒魔術を使っていたし。  キバナの木に毒を撒いていた……今回は悪魔召喚をした。もしかすると黒いことばかりして、神様の逆鱗に触れて聖女の力を失ったんじゃ? だからってアイドルは――ないと思う。 「おい! この笑顔、不気味だ」 「この人……笑っているようで、目がちっとも笑っていません」    姿を消したままのサタ様とアール君は空を飛び、垂れ幕を間近くで見て引いていた。   「エルバも見てみろよ」 「こっから見てるから……いい」  上手く言えないけど、アマリアさんは手に取るように考え方が分かりやすくて――苦手だ。      ❀   「みんな! あたしのためにがんばりなさい」  縫い物、刺繍の得意な令嬢達には法被を作らせ、手先の器用な男性にはウチワというものを作らせている。魅了魔法をこんな事に使い、周りにチヤホヤされて、ウキウキするアマリアをみて――悪魔のリリスは呆れていた。 (歴代の、悪女の様に魅了魔法を使用して戦争でも起こし、己の聖女の力を示して更に上にいく。のかと思ったが――やる事全てみみっちい、つまらない。あなた、こんな事がしたかったの? こんな事のためにリリスを呼んだの? バッカみたい!) 「ウフフ、あたしはみんなに注目される聖女なの! ジャンジャン、あたしのグッズを作りなさい!」 「「はい!」」   (アホらし……希少な、魅了魔法をこんな事をするために使うなんて……こんな、浅はかな魅了魔法に引っかかる人間も愚かだ)  召喚された悪魔リリスは、アマリアが何をするのか気になり一部始終を見ていたが……余りにもつまらなくて、ビックリしている。 (コイツの頭の中はどうなっているの? まあ、令嬢達がする刺繍は素晴らしい出来だが、あんなダサいもの着せられて喜んで……アマリアを聖女だと呼ぶの? 奇跡の一つも起こしていない、アマリアをどうして崇めれるの?)  悪魔は魅了にかからないし、力でゴリ押しするから使わない。 「アマリア、散歩に行ってくる」 「はーい、いってらっしゃい!」 (もう対価もいらないし、アイツの召喚印も消してバックれちゃおう)    エルバの考えは当たっていた。  アマリアは度重なる悪の行動により、学園に入ったすぐ聖女の資格を失っていた。今ではちっぽけな魅了魔法しか使えない。 (これで、あたしが終わるわけがない! 最後の賭けで、悪魔召喚してリリスがきたの)  その召喚により、彼女の魔力はほとんど枯渇している。聖女として結界も張れず、キズを治すこともできない――ただの女性。それが彼女にとって苦痛だった。 (魅了魔法って思ったほど使えない。よし、こうなったらみんなにローザンが魔王だって教えて、手っ取り早く株をあげる? ダメダメ、推しのローザンに嫌われるのは避けたい)
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