百四十話

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百四十話

 おお、巨大なナマズ? 湖から丸っこい顔だけを出して、キョロキョロして私たちを探しているみたい。なに? イラストに出てくるナマズのようなフォルムで……可愛い。  巨大なナマズは大きすぎて、近くにいる私たちが見えないのか、キョロキョロして。 「誰だ? 誰がいるぬるか?」  と首を傾げた。このナマズはぬるが口癖? ――か、可愛い。  私は両手を振り、ナマズに答えた。   「おーい、ここにいるよ」 「フウッ、ヌルスケ……ワタシ達にすぐ気付いたくせに……よくやるな」 「え? ボク、気付いていないぬる」 「相変わらず。ヌルスケは可愛いですね」 「そうなの。ボクは可愛い! この湖の人気者、電気ナマズのヌルスケぬる――!!」  ドンガラカッシャン! ヌルスケ君は自己紹介のあと、私たちの目の前に雷を降らせた。おお、新しいサタ様とアール君の個性的なお友達かぁ。この毒草が生い茂る、毒沼のアイドル的存在なんだね。 「あなた達の名前を、ヌルスケに教えて欲しいぬる」 「私はエルバです!」 「お前……サタナスだ」 「アールといいます。よろしく」 「エルバ、サタナス、アールかぁ。君達はここに何しに来たぬる?」   首を傾げるヌルスケ君、いい。 「私達がここへ来た理由はね。この場所で採れるタメリックと、コリアンダダを探しに来ました」 「ほほう、タメリックと、コリアンダダかぁ。この辺の草は20年前くらいに、すべて毒草へ変わったからないぬるよ」 「ええ! ここに、ないの?」 「ほぉ、そうか」 「それは残念です」  ええ……カレーへの第一歩がくじかれた。2人は苦手なポーションが飲みたくないらしく、喜んでいるのがわかる。 (カレー美味しいのに。カレーが食べたい、お口はカレーになってるのに!) 「落ち込まなくても大丈夫ぬる。魔女さんに頼めば分けてくれるぬるよ」  魔女?  私と一緒。 「ほんと! その魔女さんはどこにいるの?」 「うんとね。ここから西側の洞窟だったかな? ぬるぬる」  西の洞窟? 行ってみなくちゃ。 「ありがとう、ヌルスケ君いってみるぬる!」 「フフ。ぬるぬる」 「ポーションの素材をもらいにサタ様、アール君に行くわよ!」 「「ええ――」」  うなだれる2人を引っ張り、西の洞窟に向かった。
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