百四十三話

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百四十三話

「これは中々、おもろい研究法ね」 「ほんとうね。このやり方があったのは私も知らなかったわ」 「ねぇ、ほんとう。もっと早くに会いたかったわ」 「えぇ、でも送ったからまた魔女として生まれるはずだから、きっと会えるわね」  魔女の家から、ママ達のウキウキした声が聞こえる。ママとミネルバ様は今、書庫に残っている魔女が残した書物類を調べているらしい。  その書物の選別が終わると。ママ達は魔女の残した研究書、魔導書だけが読める、魔女の書庫にだけ入れるように魔法をかけると言っていた。誰しも大切な物、生活空間は見られたくないものだ。 「エルバ、アール、すごいな。ここまでの巨木に育てるとは……ここにいた魔女は研究熱心だったようだな」 「ええ。サタ様、その様ですね」  私とサタ様、アール君は静かにママ達の魔法を見守っている。私はナッシシのタネをエルバの畑に植えたあと、博士にナッシシの効能を聞いた。 〈デトックス効果。水分が多く含まれるナッシシはミネラル類を補給するのに最適です〉  だよね。シャクっとかじった後にジュワワって甘い果汁が口いっぱいに広がるもの。でも、それは前世に食べていた梨だから。異世界のナッシシはどうだろう気になるし、食べてみたい。  夕飯のときにみんなと食べようかな? 今日の献立を考えようとしたとき。中での作業の終わったのか、手に何か持ったママとミネルバ様が出てくる。 「ママ、終わったの?」   「えぇ終わったわ。あとは魔女アーリーが残した、この手紙をヌルスケという人に渡すだけね」 「ヌルスケ?」  ママが持っていたのは、魔女が最後に残したヌルスケ君に宛てた手紙だった。そうだ、ナッシシが欲しいと言っていた、ヌルスケ君に魔女のことを伝えないといけない。 「ママ、魔女が残した手紙……サタ様とアール君と私が一緒にヌルスケ君へ届けるよ」 「あら? エルバ達はこの魔女の手紙を届ける相手の、ヌルスケ君のことを知っているの?」   「うん。ヌルスケ君はこの近くの湖に住んでる、大ナマズだよ。その湖のまわりは毒草だらけだから……ママとミネルバ様は行かない方が……」  と。すべて言い終わる前に、ママに服の袖をまくられた。 「あっ! (しまった)」    いつもは半袖のワンピースを着ているのだけど――湖近くで毒草を食べたときにできた、緑の斑点がまだ消えていなかったので。今日はフード付き長袖のワンピースを着ていたのだ。
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