百五十四

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百五十四

 ママにすり鉢を借りて、アール君の背中に乗って戻っている。――ママにすり鉢を借りるだけだったのに、ママの瞳が「また何かするの?」と嬉しそうだった。 (カレーのことを知ったらすぐに都市に広まって、みんながカレーを作るわね) 「でも期待させて、カレーが失敗したらどうしよう!」 「ぜひ、失敗の方でお願いします」 「ええ、アール君ひどい! カレーは美味しいよ! 私は食べたい!」  相当嫌なのか、いつになく反抗するアール君と帰り。私はお礼と、レンモンのシュワシュワをご馳走してから、テントへと戻った。ママに借りたすり鉢を床に置き、ククミンとコリアンダダのシード、タタメリックをながめた。 「えーっと、ククミンとコリアンダダのシードをすり鉢ですればいいのよね。あ、刻んだタタメリックも同じか」  すり鉢に乾燥したククミンシードをいれて、ゴリゴリとすると。ククミンの独特な匂いがテント内に広がった……。 「おお、ククミンからカレーの香りがする? やばい! この香り……カレーが食べたくなる。早く、コリアンダダ、タタメリックをすってカレーを作ろう!」  すった、カレーの香りがするククミンを容器に移して、次にコリアンダダをゴリゴリする。こっちは柑橘系のよう匂いの中にほのかに甘みを感じた。――そうだ、忘れてたけど……コリアンダダの葉はパパクチーという香草。私、パクチーって葉と茎に独特の臭みがあって苦手だった。 (でも、これは平気かな)  すった、コリアンダダも容器にしまい。  最後にタタメリックをすれば終わり。  ゴリゴリ。 「おお、タタメリックはピリッとしたスパイシーな香りだ」  タタメリックも擦り終わり、遂に私はカレーを作るのに、必要なスパイスを手に入れた。 「やった! これで、カレーが食べれるはず!」  と喜んだが、魔力切れで眠気が襲う。少し仮眠をとってから、片付けとカレーを作るかなっと、私はベッドに倒れ込んだ。  どれだけ眠っていたのか、私の頬をモフモフがペチペチ叩いた。 「エルバ起きろ、メシだ」 「……ご飯?」 「そうだ、スパイス作りで疲れだろう? 皆でピザを作ったから起きて食え」  疲れて眠る私に、サタ様が焼きたてのピザを持ってきてくれた。香ばしく焼かれたチーズの香り、食欲をそそる匂いに目が覚め――グゥ〜とお腹の音がなる。 「いい匂い、お腹すいたぁ〜」 「出来立てだ、食べろ。もっと欲しかったら、外で焼いているから」  サタ様は目を覚ました私に、焼きたてのピザを渡すとテントから出ていった。いま貰ったのはトマトソースと薄切りジョロ芋、チーズがたっぷり乗ったアツアツのピザだった。 「アチチ、熱々うま〜。チーズたっぷりで伸びる! ジョロ芋もいい〜」  作ってもらったのは久しぶり、ベッドの上でサタ様が持ってきてくれたピザを楽しんだ。  
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