百五十八

1/1

476人が本棚に入れています
本棚に追加
/163ページ

百五十八

 カレーを作って、食べただけなのに?  な、なにが起きたの? 私は打ったお尻を撫でながら、飛び出てきたテントを見つめた。  いきなりカレーを食べた2人の魔力が、今まで感じたことがないくらいに爆上がりした。――いつもの、博士の効能報告が聞こえるが、いまはそれどころじゃない。 (あまりの凄さに体が震える。もしかして、神様仕様のエルバの畑から収穫したモノでカレーを作ったから、それともポーションの材料で作ったから……相当な効果はあると思うけど)  ――これは尋常じゃない。 「エルバ、すまん」 「エルバ様、平気ですか」 「⁉︎」  テントの中から出てきた、この人たち誰? と、思うくらいの魔力と美形な姿。――まあ、サタ様は初めて会ったときと、黒剣を回収するときに見た魔王様の姿だけど……隣の燕尾服、メガネ、黒髪の人は誰? (前世の漫画、小説に出てくる意地悪メガネっぽい! エルバ様はバカでいらっしゃる。の言葉が似合いそう) 「エルバ様? どうなされました」   「ウハッ、声まで低い! ――な、なんで? 2人とも姿が変わったのに……私の姿は変わらないの!」 「そこか!」 「そこですか?」 「そこだよ!」 (そりゃ〜胸とか大きくなれとは、無理なことは言わないけど。髪が艶やかになるとか、私も2人のようになりたかった……) 「――ずるい」 「クク、ワタシ達はエルバのカレーのおかげで、本来の姿に戻っただけだ――元々減っていた魔力が体を満たし、体力もフル。いまなら国を一つ、いや2つ、3つと簡単に滅ぼせるぞ」 「はい、ボクも今なら破壊できますね」  国を滅ぼす?  破壊?   「ちょっと、サタ様、アール君、物騒なこと言わないで!」  サタ様とアール君、みんながポーションの味が苦手で、私もカレーが食べたくて作ったけど……この効果はさすがにマズイかも。力が有り余って、色々と破壊して歩きそう。 (だったら、エルバの畑の素材は使わず。領地の畑でスパイスを育てた方がいいかな?) 「エルバ、まだ食べ足りぬ! カレーはもう無いのか?」 「もっと、カレーが食べたいです」  カレーを作ろうと思えば、スパイス、材料もあるから作れるけど……サタ様とアール君にこれ以上、このカレーを食べさせてはダメな気がする。   「ごめん……カレーを作るの初めてだったから、少ししか作っていないの。まだ食べ足りないのなら、お好み焼き作る?」 「お好み焼きもいいな」 「はい。カレーはまた今度作ってください」  にっこり微笑んだいつもとは違う2人に、お好み焼きを作るのだけど。もう一枚、もう一枚と、いつもよりも食欲がありすぎる! 
/163ページ

最初のコメントを投稿しよう!

476人が本棚に入れています
本棚に追加