百五十九

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百五十九

 スパイスカレーは美味しかったけど、サタ様とアール君の魔力をよみがえらした。サタ様は300年前に勇者との戦いで消費した魔力、アール君はサタ様を探して消費した、魔力と体力がフルMAXに回復したらしく。  いまは、力がありあまって仕方がないみたい。  本来――魔族は人よりも魔力、体力が多く、使用した魔力と体力は日々少しずつは回復するが、その量は微々たるもの。ポーションを飲めば多少なりは回復するのだが、あの味のポーションは飲みたくない。 「怪我をしても自然と治るから、魔力も自然に回復すれば良い」   「はい、自然にです」  一度体験した私も、改良前のあのポーションはできるだけ飲みたくないから、彼らの気持ちもわかる――のだけど。  ほんとうに、ここに住むみんなに、スパイスカレーを作ってもいいのだろうか? など考えながら私は今、大鍋で黙々とカレーを作っている。コメは新しい料理が食べたいと集まった、鬼人、魔女と魔法使いの代表さん達が釜で炊いているから安心……。 「じゃない! ほんとうに大丈夫? カレーを食べて魔力が、体力が回復した! とか言って暴れたりしない? 力、魔力が有り余って、人の里を潰しに行かない?」  隣で、コロ鳥ともち鳥の肉を捌くサタ様に聞くと。 「大丈夫だエルバ、心配するな」  と、サラッと答えた。  まあ、カレーのいい香りは風にのってみんなに届けたあとだし。あの好奇心に満ちた瞳で「カレーとはなんだ?」とか聞かれたし、パパとママにも頼まれたから断れなかった。  ――だけど、気をつけなくてはならない。  サタ様の仲間だったパパと、領地に住むアウドラムの家族とゲンさん、ラッテ、アビス君、パワー様、ユキの、みんながスパイスカレー食べたら――領地に新しくできたお相撲広場と、枕投げ会場が、いや領地全体が破壊されるかもしれない。  少しだけ見てみたい気もするが、みんなで作った領地を壊されるのは困る。でも、みんながカレーを食べて笑顔になるのも見たい。米を炊く鬼人と魔女、魔法使いさん達がが。いま作っているスパイスカレーを食べたら、すぐ新しいカレー料理が都市に生まれるだろう。  ――それは、それで楽しみなんだよね。  大鍋に作ったスパイスカレーを味見した。 「うん、美味しい! パパ、ママ、みんな! スパイスカレーが出来たよ!」 「「ヤッタァ――!」」  炊き立てのコメと、出来立てのカレーをお皿によそいくばり。みんなで「いただきます」とカレーを食べたすぐ、みんなはフルマックスで、パワーがみなぎる。  ――ま、マズイ!  パパ、アウドラムのパパ、ゲンさんはお相撲を取り始め、サタ様達は枕投げ会場でフルパワーで枕投げをはじめた。アウドラムのママさんと子供さんはお相撲の見学。  案の定鬼人、魔女、魔法使いさん達は新しいカレーの研究会議をはじめ。ママは「体が軽いわ」と何処からか杖を取り出して、荒れ狂う相撲会場と、枕投げ会場の外に頑丈な防御魔法を張ってくれた。  そして、ママはたのしげに鼻歌を歌い。 「フフ、エルバ、カレーはあのポーションよりも美味しくて効くわね! いまならどんな魔物、いいえどんな魔王が来ても倒せそう!」  と、ママの瞳がきらりと光った。
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