十五

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十五

 ママの言葉に私は驚かしなかった。 「魔王様っいるのか……」 「ええ、魔族の森の奥に魔王城だってあるわ。最近まで誰もいない魔王城に、もしかすると新魔王が誕生したようね」  魔法使い、魔女、亜人種族、魔族の人達がいるんだ、前魔王様と新魔王様がいてもおかしくない。 「だったらなぜ? パパは倒れたの? 新魔王様が生まれたんだったら喜ばないの?」  ママは困った表情を浮かべた。 「そうね、普通はそう思うのだけど。魔族は違うの、パパはね、前魔王様の側近をしていたって言ったわよね」 「うん」  私は頷いた。 「普通の魔族と、魔王様から証を貰い配下となった魔族は違うの。魔族はね――我が王と決めた者に生涯尽くす。そんなの新魔王様からしたら反乱分子にもなるし、邪魔者になっちゃうわね。前魔王様が消えるか……魔王の座を捨ててくだされば、この状況は変わるはずなのだけど……」 「だったら……魔王をやめてと、前魔王様に言えばいいんじゃない?」 「そうね、ママだって前魔王様に言えるなら言いたいわ。だけどねエルバ、前魔王様は勇者との戦いからもう何百年と行方不明なの。……もし、前魔王様が勇者に倒されていたらパパ達は配下から抜けていたわ。パパが言うには、それが今も配下のままらしいの」 「え!」  何百年もの間……魔王様は行方不明で、パパは前魔王様の配下のまま……! +  パパは前魔王様の配下で、新魔王様によって消されそう。いまは大魔女ミネルバ様の魔法で、毒の進行を遅らせていると言っていた。もって後一ヶ月――パパだけではなく、ミネルバ様の恋人とあと二人いるといった。 「どうにか、前魔王様を見つけないと……」 「そうね。サーチ魔法でこんなに探しても見つからないなんて……前魔王様はどこかに囚われているのかしら?」 「魔王が囚われている?」  ふと、この世界のくる前、キャンプ場で読んでいた小説を思い出した。たしかーーヒロインは大昔に魔王を倒した聖女の子孫。学園で勇者と魔王がヒロインをとりあう……だったかな?  コメディで好きな小説だった。  ヒロインがこれでもかって勇者と魔王様、王子などに好かれる。――そして、ヒロインは活発的な聖女。癒しの力と魔力は誰よりも高く、古城に囚われた古代魔王を助けたり、おどろき回復力で危機におちいる人々を助ける。  あり得ないと思いつつも、いつも読んでいた。  たしか……古代魔王の名前ってサタナスで魔王の名前は……ローザンだったかな? 「ねえ、ママ! ママは前魔王様の名前は知っている?」   「前魔王様の名前? たしか、魔王サタナス様だってパパに聞いたことがあるわ」 「……魔王サタナス」  ドキパラ学園に出てくる古代魔王様と同じ名前だ。そうか、私が生まれ変わったファンタジーの世界が「ドキパラ学園! 生まれ変わりの聖女は勇者と魔王に愛される⁉︎」の世界。  そんなことがあるんだ……  だけど、いま前魔王様の手が借りがない以上……探してみる価値はある。探してみて違ったら次の手を考えればいい。  ――大好きな、パパの命がかかっている。前は急げだ!  前魔王様と呼ばれる魔王サタナスが"ドキパラ"の古代魔王様だとすれば"彼はどこ囚われていた?" ……えっと、たしか…………シュノーク古城の最上階の部屋! 「ママ、世界地図はある?」 「ええ、あるけど」 「お願い、みせて!」  ママは食卓に待ってきた地図を広げた……シュノーク古城が実際にあれば「ドキパラ学園」の可能性大。  古城、シュノーク古城……地図を指差しして探し……あ、みつけた、それも私達のいるところから近くにある……これで確定、この世界はキャンプで読んでいた小説――ドキパラの世界だ。  ――もしかして神様は、私が好きな世界に転生させてくれたの?
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