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 私がこの異世界に来る前。    明け方、キャンプ場からの帰りスマホで地図をみながら、ほそいクネクネした山道を、キャンプ道具をくくりつけた原付バイクで走行していた。 「ここの山奥のキャンプ場に来るまで、山の道のりはきびしくて遠いけど。こんかいも癒されたわ」  アパートに戻ったら、スマホで撮っためずらしい可愛い花たちと、植物を図鑑で調べなくちゃ。  私はソロキャンプと自然のなかに咲く植物を眺めて、調べるのが好きだった。 (野草とか、すごい効能があったりして面白いんだよね。たまに毒草とかもあるけど……)  植物はおもしろい。    さて、次の休みにはどこのキャンプ場に行こうかなぁ〜フフン。  のんきに鼻歌を歌いカーブを曲がる直前、タイヤのスリップオンが聞こえ、こちらに向かってくる眩しい光。  え、ええ、ぶつかる!     「きゃあぁあ――――――!」  ぶつかったひょうしにバイクはガードレールを突き破り、私の体は宙に浮いた。何が起こったのかわからず。とっさに目の前の大事なキャンプ道具を入れた、カバンを胸に抱きかかえ。  あちゃ、これはたすからないかも。    な――んて、のんきにかんがえる余裕さえあって。まっいいっか、しかたがないと思う自分がいた。    冷たい両親にできのいい妹と比べられて。  家をでたくて高校卒業後に就職したけど、残業ばかりブラックまではいかない職場、口うるさい先輩たちにうんざりしていた。    もし――神様がいて生まれ変われるのなら。 「優しい両親。自然とふれあい、のんびりキャンプがしたいなぁ」ちょっと贅沢だけどお願いしまーす。と願った。    ……  ……  あれ?  …………どこからか、声が聞こえる。    ……ちゃん、おねんねしましょうね?    しらない、女性の声だ。  こんどは男性? 「カルデラ、エルバは寝たのか?」 「ええ。いま、寝たところよ」 (……カルデア? エルバ?)  ちょっと待って。私、いま事故に遭ったんじゃと、パッチリ目を開いた。 (こ、ここ、どこ?)  みおぼえのない、部屋。  いくつもの変な動物がついた、吊り下げおもちゃ。  嗅いだこともない、香り。    病室ではなさそう。 「(ここは、どこ?)あ、う、ううっ」  お、言葉もうまく話せないし、小さな手?  二人は手足をばたつかせる、私に気付き。 「あ、……カルデア、ごめん。エルバが目を覚ました……」 「ほんと? あら、しかたのないタクスパパでちゅね」 「うーうー(パパ?)」  私の両親?   「エルバも、そうだって言っているわ」 「そんなぁ、エルバ……」 「あーあー」 「あなたを見て、エルバが笑ったわ」 「ほんとうだ笑っている。可愛い……なぁ、ほんとうに…………可愛い」  その声はだんだんと震えてきて、瞳には大粒の涙を浮かべた。    ――え、な、泣かないでパパ? ママ?  手を伸ばしたけど小さな手では、ポロポロ流れ落ちる涙を止めることはできなかった。 「……とても、幸せだわ」 「ああ、俺だって……美人なママと、可愛いエルバのパパになれて幸せだ!」  そう、叫んだ後さらに号泣した。  
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