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二
「あー、あー」
子供部屋――天井から吊るされるのは魔法の力で回るオモチャ。
手には光りがでてカラカラ鳴るオモチャ、ベビーベッドで寝返りを打ちながら考える。
あのとき、私は死んでしまって。
この魔法があるファンタジーの世界に転生したのか。
――魔法のある世界かおもしろそう。
今世のママが料理をするとき、指ひと振りでコンロに火の魔法で火をつけ、水を水魔法で出し、お鍋、おたま、包丁、まな板――調理器具を自由に操る。
編み物をするときだって浮いたまま編まれていくし、うちには薬を調合する調合室もあった。
❀
私がこの世界に生まれてから八ヶ月が経つ。
つかまり立ちと、ハイハイができるようになり行動範囲が増えた。なかでも文字が読めるとわかり、パパとママの目を盗み、ハイハイで書庫に移動して本を読んでいる。
この日も、こっそりベビーベッドを抜け出し書庫にきていた。
（今日は、どの本を読もうかな？）
本棚に掴まり立ちをして本を探し。
前から気になっていた――この国の歴史書を本棚から引きずりだし本を開いた。
――うわっ、大きな大陸。
え――っと、リ、リーベラ大陸？
このリーベラ大陸の西には人間の国グランハ。
中央にサングリア魔法都市。
東には魔族の国マシュ。
ふむふむ。私が生まれたのは中央にあるサングリア魔法中立都市ね。都市にはおおくの魔法使い、魔女、亜人種たちが住んでいる。
魔法都市の中央に建つ古城サングリアには"希少な魔法石"を守る、大魔女と呼ばれるミネルバ様が住んでいて。
朝昼晩――魔法石に祈りを捧げ"守り結界"を都市に張り、人間、魔族から私たちを守っている。
――人間と魔族から守る？ なぜ？
大昔――サングリアは勇者と魔王の戦いに巻き込まれた。争いごとが嫌いな魔法使い、魔女、亜人達は勇者側の人間に捕まり、戦争の道具として使われた。
と書いてあった。
またある日。書庫で魔法の本を読んだ私は見よう見まねで魔力を練ってみた。
――お、目の前に真っ白な球ができた……けど、どんどん大きくなっていく。
やばい、消せないし
制御できない……ば、爆発する？
「――あ！」
ふくれあがる魔力に、いちはやく気付いたママが書庫に飛んでくる。魔力の真前にいる私を抱きかかえ、杖をだえ、どんどん、ふくれあがる魔力をすべて吸いとった。
「エルバ……あなたがやったの？」
「…………」
「……そう」
魔力の扱い方を習いもせずに使うと、大けがをしてしまうといい――次の日から書庫に鍵が掛かる。
そして、私がベビーベッドから逃げださないよう。パパとママは柵をたかくした。
つかまり立ちをしても無理。
（コレでは外にでられないし、柵を触るとママがくる）
私はベッドでおとなしく、小指の先くらいの小さな球で魔力訓練をはじめた。
「う――あっ、あ、う（上、下、右、左）」
魔力の練り方を練習して、自由に光の玉をつくり、操れるまでになった。
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