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絆か呪いか
自分でいうのもなんだが、3つ年上の姉は、私のことが大好きだ。
同じ両親の間に生まれ、同じ環境で共に育ってきた。姉は私の欲しいものをなんでも持っていたし、私が欲しがればすべて与えてくれた。
姉は昔から、なんでも与えてくれる。
同じ血が流れる私と姉は、姉妹という絆で繋がっている。これまでも、これからも。
とはいえ、与えられてばかりの私は、今まで姉への感謝をきちんと伝えたことがない。日々小さな「ありがとう」は口にしているが、今まで与えてくれたものすべてへの感謝と謝罪を、結婚という人生の節目を前に、改めて伝えたい。そんな思いから、手紙を書いた。
……この手紙、この思いは、姉に届くのだろうか。いや、私のことが大好きな姉なら、きっと読んでくれるはずだ。
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お姉ちゃんへ
大好きなお姉ちゃん。
いつもありがとう。私のお姉ちゃんでいてくれて、ありがとう。
たくさんの感謝を伝えたくて、手紙を書きます。
ちょっと照れ臭いけれど、思いが伝わったら嬉しいな。
お姉ちゃん、私が幼稚園生のとき、リカちゃん人形を奪ってごめんね。
お姉ちゃんが楽しそうに遊んでいるのを見て、欲しくなってしまったの。
「自分はもう遊ばないから」と言ってリカちゃん人形をくれて、ありがとう。
お姉ちゃん、私が小学生のとき、お気に入りのピンク色のワンピースを奪ってごめんね。
お姉ちゃんがかわいく着こなしてるのを見て、私も着たくなってしまったの。
「自分はもう着ないから」と言ってワンピースをくれて、ありがとう。
お姉ちゃん、私が中学生のとき、メイク道具を勝手に使ってごめんね。
お姉ちゃんがどんどんきれいになっていくから、真似したくなったの。
「自分はもう使わないから」と言ってメイク道具一式をくれて、ありがとう。
お姉ちゃん、私が高校生のとき、たくさんつまみ食いしてごめんね。
お姉ちゃんがお料理の練習しているのを見てたら、食べたくなっちゃったの。
「自分はもう作らないから」とレシピ本をくれて、ありがとう。
お姉ちゃん、お姉ちゃんが入りたかった化粧品会社、先に就職してしまってごめんね。
お姉ちゃんが目指す世界がどんなところなのか、興味が湧いてしまったの。
部屋に置いてあった就活の本、勝手に借りてしまったけれど、お姉ちゃんの本棚に戻しておいたよ。貸してくれて、ありがとう。おかげで無事に社会人になれたよ。
最後に、お姉ちゃん。
恋人を奪ってしまってごめんね。
お姉ちゃんがどんな人を好きになったのか、お姉ちゃんを好きになる人はどんな人なのか、好奇心が止まらなくなってしまったの。
でも、お姉ちゃんのおかげで本当の愛を知ることができたよ。本当にありがとう。
今度ね、結婚することが決まったの。
私がここまで生きてこられたのは、お姉ちゃんのおかげです。こうして幸せになれたのも、いつもお姉ちゃんがいてくれたからだよ。
どんなに感謝しても足りないくらい、私はお姉ちゃんが大好き。
お姉ちゃん、今どこにいるのかな。私たちの結婚式にはきっと来てくれるよね。
私の、なんでもくれるお姉ちゃん。
これからもお姉ちゃんは、私のお姉ちゃんだよ。
私の苗字は変わるけれど、私たち姉妹の絆は変わらずに、ずっとずっと、よろしくね。
ただ一人の妹より
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