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地面を均してから1球目を投じた。
綺麗な回転を残して、ストライクゾーンを掠める。
「もう1球いいかな?」
彼の一言に頷き、ワイドアップに入った。
放たれたストレートを目に見えないスイングで一閃された。
角度が良すぎて、直ぐに高架の天井にぶつかってしまった。
「ごめん、つい手が出ちゃったよ」
彼はそう言いながら、頭をかいていた。
とても静かなスイングに、ウララは驚いていた。
「良い球が見れた。またね」
そう言って立ち去ろうとする。
「あの、お名前だけでも!」
意を決して尋ねた。
「金村。じゃあね」
バットケースを担いで、土手を上がっていく。
ウララは背中を見つめる。
(良い男……それに野球も上手い……)
しばし金村の事を考えていた。
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