失恋からの

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降りたい、と言えるだけの口実なんて見つからず、苦し紛れに思い付いた事を訊ねてみる。 「車でお酒飲みに行くの?」 帰り飲酒運転になりますよー、なんて。 「帰りは代行頼むから心配すんな」 ハンドルを操りながら、澄ました顔をした男からは当たり前に普通の答えが返ってくる。 もしかして帰りはホテルに連れ込まれたりしないだろうか。ワンナイトとか、したことないけど。そういうのって、普通のことなんだろうか。 「ホテルに連れ込む気もねーよ」 「え!」 パッと隣を見ると妖艶なオーラを漂わせた男が、「行きたいなら行ってもいいけどな」と楽しそうに笑う。そんな風に笑ったりするんだって不覚にもドキッとした。 じゃなくて!なんであたしの心の中がわかるのか。ソワソワしているあたしの事なんてお見通しらしい男は、慣れているのか余裕しか感じられない。 なんだかちょっと悔しくなる。
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