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こんな男がどうしてあたしに構うのだろう。マンションのエントランスでのやり取りを見ていたというだけで、声なんてかけるだろうか。
普通はスルーして終わりだのはずだ。
「なんで声かけたの?」
「好みだったから」
「……は?」
その佇まいで、それはダメだ。安っぽすぎるセリフが独特なオーラに似合わなすぎて、すんごいガッカリだ。
そこは軽く流すとか、曖昧にするとか。
ミステリアスな感じでお願いしたかった。
男は自分のセリフにフォローを入れる事もなく、ただ前を向いて笑っているだけだった。その横顔は素敵だったけれど、だからこそ男のセリフに納得がいかない。
純白が停車したのは、どちらかというと明るくないちょっと怪しげな感じのする通りだった。どうしよう、ますます怖くなってきた。
あたしの心がわかっているはずなのに男は、「降りろ」とだけ口にしてあっさりと車を降りていく。
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