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飲みやすい感じのお酒を出してくれた素敵な男は、お酒を出した後すぐにどこかに消えていった。
「ちょっと出て来るんで店番頼みます」
客であるはずの黒い男に、ニコニコしながらお願いをしてカウンターの奥へ引っ込む。
何故か引っ込んでいく素敵な男に、「悪ぃな」って隣の黒い男は謝罪のような声をかけた。まったく意味がわからなかった。
〝今から行く〟と電話で言っていたのに、男にどこかへ行く様子はなく。ずっとあたしの隣でお酒に付き合ってくれた。
何杯目か、もうよく覚えてない。戻ってこない素敵な男に代わって、黒い男があたしのグラスが空になる度、新しいお酒を用意してくれた。
もう完全に酔っ払っている。
頭が働かない。
何を話したっけ?
マサ君のこと、言ったっけ?
けっこう愚痴ったっけ?
ちゃんと座っていられず頭を上げていられなくなったあたしは、カウンターに頭を降ろして隣の男を見上げる。
同じように飲んでいるはずなのに、男の様子は最初と少しも変わらないからムカつく。涼しい顔をして隣に座って、グラス片手に煙草を燻らせる。それだけで、サマになる。
こんな男とお酒を一緒に飲んでいるのが、まだ信じられない。
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