失恋からの

20/23
228人が本棚に入れています
本棚に追加
/253ページ
〝毎日、高級料理を食えねぇヤツが偉そうに言っていいセリフじゃないだろ〟 そう言っているみたいに聞こえて、心が軽くなった。男にそのつもりがあったのかどうか、正直わからないけれど。 お酒を飲んでいる間、ほとんどあたしが話していた。よく覚えていないけれど、男はただあたしの話に相槌を打っていただけだったように思う。 その中で時々、心に残ることを言ってくれた。他の人ならどうかわからないけれど、あたしの欲しい言葉をくれた。 「だいたいお前、高級料理なのかよ」 フッと鼻で笑いながら、煙草を持った手でお酒の入ったグラスを持ち上げ口に運ぶ。あたしにはお水を出して来たクセに、まだ飲むのか。まだ、飲めるのか。 あたしの何を知っているのって、いらっとする。なんにも知らないクセに〝高級料理なのかよ〟って、バカにしてるのか。 それなのに、なんだかホッとする。だって、あたしは高級料理じゃないし高級料理になりたいわけでもない。 この男には、それがわかっているのか。 マサ君との日常にあたしが求めていたのは、そんな大それたものなんかじゃなくて。高級料理とか、そんなつもりはなくて。
/253ページ

最初のコメントを投稿しよう!