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ワンナイト
ぼんやりとした意識の中、何処なのかわからないけれどソファーに座らされた。頭がふわふわして、座っていられない。
ぽてっとソファーに倒れ込みそうになったあたしをゆっくりと横にしてくれた男が、あっさりと離れていこうとするので慌ててその腕を掴んだ。
「どこ、行くの…」
ソファーの前にしゃがみ込んでいた男はちょうど立ち上がろうとしていたところだったから、少し腰を浮かした状態であたしに視線を向けた。
黒ブチ眼鏡の向こうの目と視線が絡む。同時に上げかけていた腰を男が再び下ろした。
「……どこにも行かねーよ。つーか、俺ん家なんだから行きようもねーし」
「おれんち……?」
ふにゃふにゃしながら聞き返すと、男は眼鏡の奥の目を少し細めて不機嫌そうに眉をひそめた。
「俺、女は家に入れねぇ主義なんだけど。ここに入ったのお前が初めてだからな?」
自分の部屋をあたしがちゃんと伝えなかったから、仕方なく男はあたしを部屋にあげてくれたらしい。本当は入れたくないのに。そうして今に至るらしい。
暖色系の明かりが照らす室内は雰囲気があって、妖艶な男のオーラを更にパワーアップさせる。
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