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「抱いてよ。慰めてくれるんじゃないの」
決して、目は逸らさなかった。男もまた、あたしから目を逸らさなかった。
「……いいけど」
「………」
「酔っ払いの意識のねぇお前を抱けってか?」
「だいじょうぶ。意識はある!ほら!げんきー!」
だいじょうぶを伝えようと起き上がったあたしは、ふらりと男の胸にダイブした。
「…どこがだよ」
あたしを受け止めた男は呆れたように笑う。煙草と爽やかな匂いのする男の背中に手をまわして、胸に顔を埋めたあたしは、
「忘れさせてよ……」
呟くように小さく口にした。そんなあたしを抱き締めて。優しく背中を撫でて。わかった、と言った男の声は特別に優しく聞こえた。
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