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男はひょいっとあたしを持ち上げた。華奢で細身なのに、あたしを軽々と持ち上げられるほどの力はあるらしい。
そんなことをされたのは初めてだったから、「あるけるから!」ってテンパると、男に鼻で笑われた。
おろしてくれる事などなく、リビングを出て暗い寝室に運ばれた。ふかふかのベッドにゆっくりとおろされて、男の匂いが溢れているその場所にまた興奮する。お酒の力って、ホントに信じられない。
この匂い、好きだ。
あたしの上に覆い被さるようにいる男がベッド脇のサイドランプを点けると、ぼんやりとした明かりが室内を照らし、男の色気がいちだんと際立つ。
あたしを見下ろす黒ブチ眼鏡の奥の目をじーっと見つめていると、心臓が高鳴ってゆく。かつてないくらいの緊張が襲ってくる。
さっきまでの興奮はいずこへ。
自分から誘っておいて、逃げ出したい。
ここに来て怖くなる。
酔いが冷めたわけではないけれど、なんだかちょっと冷静な自分もいてよくわからない。どうしたらいいのか、わからない。
マサ君としかしたことがないから、どうするのが正解なのかわからなすぎて。頭も働かないしで、わけがわからない。
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