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はぁはぁって呼吸をしながら、息ひとつ乱れていないむっちゃ余裕そうな男をとろんとした目で見上げた。苦しいのに、まだ触れていたい。
男の感触がまだ残るあたしの唇を、妖艶な顔をした男が指でゆっくりとなぞる。
「なに考えてんだよ?」
すぐそこにある眼鏡の向こうの男は眉をひそめ、なんだか少し不機嫌な顔をしていて。
「え……?なに、って」
熱い吐息とともに絞り出すように声を出す。
「今、あの男のこと考えてただろ」
「な、んで…」
なんでわかるんだろう。
マサ君のこと、思い出していたって。
「そういうの伝わんだよ」
「え、」
「そんなアイツ良かったのかよ」
指でなぞった唇を今度はぺろりと舐めてくるから、働かない頭がもっと働かなくなる。男の言葉が理解できない。
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