森鴎外の本名と同じ

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 泣き声をかんで、涙がおさまるまで泣いて、『今ブサイクになってるだろうから嫌だなあ』と思いながら、顔を上げた。 「ありがとう。林ちゃん」  林太郎は微笑んで、抱きしめていた両腕を解いた。  そして両手で結の頬を思いきり挟んだ。 「あのねえ。ずっと思ってたんだけど、付き合ったんだから呼び捨てにしなさいって言ったでしょ。林ちゃんじゃなくて、り・ん・た・ろ・う!」 「え? そ()?」  頬を挟まれているので、うまく発音できない。  たしかに付き合うときに、『これから林太郎って呼んでちょうだいね』と言われたが、ずっと『林ちゃん』と呼んでいたし、林ちゃんは林ちゃんで、恥ずかしいので呼べていなかった。 「ほ、本名嫌い()ったらどうしようかなと思っ()」 「何しらじらしいうそついてるのよ。呼ばせたくない奴には『リン』って呼べって言うし、林太郎って男感満載だけど、『森鴎外の本名と同じです』って説明するの楽だから、そこまで嫌いじゃないわよ。何より!」  結の頬から林太郎の手が離れる。 「あたしが呼んでって言ってるのよ。結は特別なの」
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