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心をこめた
手の中にある、ピンクのフェルトのウサギ。
「できたよ!」
エミリーは居間のソファーに座る母を振り返る。あふれる気持ちそのままに、立ち上がって勢いよく母のひざへつっこむ。
「痛! 何、エミリー!」
「ウサギできた! はじめて! うまいでしょ?」
エミリーが母へ差し出したのは、ピンクのフェルトに木くずをつめて、ビーズで目をつけたウサギのマスコットだった。
母は「おお」と驚いた声をもらして、ウサギをのぞきこむ。
「うまいうまい。やっぱり血筋かしらね?」
「やった! これでもうすてられない!」
エミリーは今まで紙でウサギを作っていたが、間違えて捨てられることがよくあったのだ。
「ああ……ごめんね、捨てて」
母はばつが悪そうに顔をそらす。
「もうすてないでね!」
「ああうん、ごめんね。でも布ならどこにでも連れていけるし、いつでも持ってられるでしょ? さすがに間違って捨てたりはしないから」
恐縮そうに身を小さくしている母に、エミリーは力強く頷く。
「わかればよろしい」
「名前はもう決めたの?」
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