幸せなのだ

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「お久しぶりです、ようこそいらっしゃいませ!」  小間物屋に戻ってきてから、春子は店先に作った香水を置かせてもらっていた。そうして自分で令嬢たちに手紙を書いたり、玲が広めてくれたりしたおかげで、ぽつぽつと以前のお客が訪れてくれるようになったのだ。少量ながら、オオダアメイドも受けるようになった。  清美がにこやかに、洗練された所作で店内へ入ってくる。 「ここが新しいお店なの? まあ、何でもそろっているのね」 「はい、何でも豊富に! 香水もこちらに。オオダアメイドも受けております」  店内を見渡した清美が、春子の隣で視線を止める。子槻が、穏やかな目で清美を見ていた。 「こちらの方は?」 「ああえっと」 「天野子槻と申します。はじめまして」  言葉を引き継いだ子槻の目が、ほんのわずか、寂しそうに見えた。  清美はでき上がっている香水を買い求めてくれ、またオオダアメイドを頼みに来てくれるという。 「春子、君は包んでおいで」
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