幸せなのだ

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 勘定は子槻が引き受けてくれたので、春子は薄紫の香水瓶を和紙で丁寧に包んで、千代紙の貼られた箱に入れた。すみれに似た香りの香水だ。清美にきっと似合うことだろう。店の出口に立って、清美へ箱を渡す。 「ありがとうございました。またぜひお越しください」 「ええ。つけるのが楽しみ。お店がなくなってしまって、本当に残念に思っていたの。また来られるのが嬉しいわ」  そうして清美はつと春子の隣へ視線を移した。 「どうかされましたか」  視線を受けた子槻が淡く笑みを浮かべる。清美は子槻を見つめて、頬を緩めた。 「いいえ。ごめんなさい、ぶしつけに。どこかでお会いしたことがあるような気がしたものだから」  子槻が瞳を見開く。瞳が、少しだけ泣き出しそうに揺れる。 「春子さんとも仲睦まじいようだし」 「さすが夫人! お目が高い。春子はわたしのつ」 「子槻さん!」  いつもの調子を取り戻した子槻を制して、春子は子槻とふたりで清美を見送った。  店を閉めたあと、子槻が夕食を共にしていくことになった。義母がおかずを作りすぎてしまったらしい。
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