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突然飛んだ話に、春子は首をかしげた。必ず子槻の妻になるかどうかはさておき、考える。
「ええと……幸せに立場もお金も関係ないと思いますが……」
「けれど貧しければ君に不自由させてしまうだろう。だから人の体を探すときに、お金に困らないという条件も加えたのだ。結果、時間はかかってしまったが、見つかった」
「だから商事の天野家を選んだんですか?」
「うむ」と頷く子槻に、春子は心底驚いた。そこまで考えているとは思わなかったのだ。本当にまっすぐで一生懸命で、春子のために手を尽くしてくれていたのだ。
「ええと。わたしは貧しかったとしても、一緒になったなら、一緒にいられるだけで幸せです。苦労しても、ふたりなら幸せです」
子槻が目を見開いていく。何か変なことを言っただろうかと思っているうちに、子槻の瞳が輝き出す。
「それは、とうとう妻になってくれるということか? ついに!」
「ど、どうしてそうなるんですか?」
「わたしと一緒にいられるだけで幸せだと、今そう言ってくれたではないか」
そういう意味で言ったつもりではなかったのだが、たしかに誤解をまねく表現だったかもしれない。
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