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風に、白い花びらが一斉に散る。子槻のとろけそうに柔らかな微笑に、花びらが舞いこむ。きなこ色の髪に、頬に当てられた春子の手に、触れていく。
熱が、弾けた。
「し、しししし子槻さんの破廉恥!」
春子は手を振りほどいて縁側を後ずさりしていた。
「な、なぜだ? 何がいけなかったのだ?」
「自分で考えてください!」
かわいそうなほど狼狽する子槻に、春子は胸の前で手を握りしめて顔をそらした。多分、子槻に下心などない。本当に素直に、求婚の言葉として言っただけだろう。いかがわしく聞こえてしまう春子のほうがいかがわしいが、それより、自分自身に動揺していた。
今までも散々妻に妻にと言われていたのに。本当だと、父性ではないと分かったからだろうか。
どうして息苦しいくらい、鼓動が大きくて速いのだろう。
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