第一章 *冬*

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 相手の核心をつく時にあふれ出る殺伐とした緊張感が、凪は苦手だった。そのくせそこを無自覚につくのは誰よりもうまい。 「多分ね」  壊そうかな、と思った。 「合ってないんだと思うよ」  冷静に出した声は低い響きを伴っていた。 「まゆのやりたいことと、目指すべき方向性が」  相手が目を見開く。 「私にダンスは向いてないってこと?」 「違う。方向性って言っただろ。ポップなことやってるじゃん、今。でも周りがお前に求めているのは、それじゃない。お前の笑顔は怖い。笑いながら、美しい顔で踊るお前がすごく怖いよ」  きっと自覚があるのだろう。まゆの瞳が揺らいでいた。不安そうに交差する互いの視線。彼女の目に自分の無表情な顔が映り込んでいる。 「まゆは知ってるはずだよ」  掴まれている腕が痛い。きつく指を食い込まれている。 「今のままじゃ飛べないってこと」  まゆは押し黙った。  この子は、本当は気づいているのではないか。自分が彼氏に求めているものと、凪が自分のどこを見ているのかという視点に。 「まゆは俺にどうしてほしいの」 「……私は」
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